オーディオ機器を一通り揃えると、次に気になってくるのが「電源周りのノイズ対策」です。
クリーン電源やアイソレーショントランスなど選択肢はいくつもありますが、その中でも「電研精機のノイズカットトランス」はコスパに優れた電源改善機器です。
ただ、実際に導入するとなると気になるポイントもあります。
・うなり音や発熱などのデメリットは?
・業務用っぽい見た目だけどオーディオ用途に使えるの?
電研精機はオーディオメーカーではないため、ネット上にレビューが少なく、当時は情報収集に苦労しました。
それでも思い切って導入したところ、結果は大正解でした。今では5年以上愛用しています。
防音室を作るほどのオーディオ好きとして、専用回路を引いた環境で検証しましたが、ノイズが明確に減少し、音の輪郭がよりハッキリと感じられました。
この記事では、聴覚で感じた音の変化やノイズ測定の結果、そして使ってわかったメリット・デメリットを紹介します。
電研精機ノイズカットトランスのレビュー|音質改善とノイズ低減の実力
今回導入したのはNCT-I1です。200V対応でプラグと電源タップを自分で取り付けるタイプです。

100V環境で使う場合は、コンセントが最初から付いていてすぐに使える「NCT-I3」がおすすめです。
肝心の音質ですが、一聴して違いがわかるほど変化しました。
導入前に比べ、音が前に飛んでくるように力強く、背景は静かで高S/N、音が空間に浮かぶのがはっきり感じられます。
なんでもっと早く導入しなかったのかと思うほどの変化でした。
さらに、オーディオメーカー製の電源機器と比べてコストは1/5以下と非常にお手頃です。価格以上の効果が感じられる、コスパの良い電源でした。
📋️ノイズカットトランスとは?
「ノイズカットトランス」は、電研精機が商標登録しているオリジナル製品で、一般的なクリーン電源やアイソレーショントランスとは構造が異なります。
もともとは産業用や医療機器向けとして使われてきた技術を、オーディオ用途でも活かせるのが特徴です。
ノイズカットトランスで音が変わる理由とは?
音質改善に影響があったのは主に2つです。
・ノイズカットトランスによるノイズ低減効果
200Vはバランス伝送というもともとノイズに強い方式ですが、そこにノイズカットトランスの効果が加わることで、より安定したクリーンな電源を得られます。
その結果、音の背景が静かになり、音の輪郭が一段と明確になりました。特に高価なオーディオ機器ほど、変化をより実感しやすいと感じました。
以前は専用回路(100V)から直接電源を取っていましたが、この組み合わせにより明らかに音質がワンランク上のステージに到達しました。
オーディオは「電源から変わる」を実感しました。
200Vや専用回路等の電源についてはこちらの記事で詳しく書いています。
ノイズはどれくらい減った?|測定結果で確認
EntechのNoise Analyzerを使って、ノイズがどれくらい減少したのか検証しました。
私の環境では専用回路を使用しているため、まず専用回路単体のノイズ量を測定し、それからノイズカットトランスの効果を確認しています。
まず、ノイズ対策をしていない標準コンセントで数値を「100」に設定し、それから比較したいコンセントに切り替えることで相対的なノイズ量を確認しました。
結果はこの通りでした。

結果をグラフにしました。

専用回路の段階でも、ノイズは約80%抑えられています。
さらにノイズカットトランスを使用すると、標準コンセントに比べて91%ノイズが低減しました。
専用回路と比べても半分以下に抑えられています。
この結果からも、トランスのノイズ除去能力がしっかり働いていることが分かります。
これだけノイズが下がると、スピーカーからの音に変化が出るのも納得です。
ノイズが減ると、今までノイズに埋もれていた微細な音が聞こえるようになります。
使用して感じたメリット・デメリット
メリットはしっかり感じられ、デメリットはごく小さなものでした。
私の環境では、導入効果がはっきりと現れています。
・音質改善の効果がはっきり出た
・うなり音、振動、においなし
▲デメリット
・本体がやや熱を持つ(通常使用では問題なし)
・見た目の業務用感(ラック裏に置けば気にならない)
実際に使って感じた印象をもう少し詳しく紹介します。
まず、音質面では明確にプラスの効果があり、マイナス要素は特に感じませんでした。
他のトランスで起こりがちな「うなり音」や「油のにおい」も、このトランスでは発生しませんでした。
稼働中も非常に静かで、再生中に動作音が気になることはありません。
音楽にしっかり集中できます。
特にSoulnote製品はトランスがうなりやすいといわれますが、私の環境(DAC:D-1)ではノイズカットトランスに接続しても完全に無音でした。
デメリットをあげるとすれば、本体がやや熱を持つことです。とはいえ、通常使用の範囲では気になるレベルではありません。
また、見た目は少し業務用機器のような無骨さがありますが、オーディオラックの後ろや下段に設置すれば気になりません。むしろ質実剛健な作りに安心感があります。
このあとで、実際の表面温度を測定し「どのくらい熱くなるのか」も検証しています。
熱はどれくらい持つ?|実測データと対策
ノイズカットトランスは使用中に多少熱を持ちます。8時間連続使用した際の温度は 約36.8℃(室温27.6℃)。
ちょうど体温と同じくらいなので、触って「ほんのり温かい」程度です。
放熱効率を高めるため、トランスの下にはアルミ板を敷いています。
その効果を確認するため、アルミ板の温度も測定しました。
| 条件 | 温度℃ |
|---|---|
| 室温 | 27.6 |
| トランス本体 | 36.8 |
| アルミ板 | 32.0 |
測定時の画像です。トランスの表面温度を測定しています。

A級アンプのように50℃を超えるほどではなく、部屋の温度が上がるような心配はありませんでした。
放熱対策
熱の件でカーペット直置きが少し気になったので、アルミ板+ボルトでトランスを浮かせて放熱対策をしました。


対策したこと
・トランス本体を四隅のネジ穴を使って浮かせる
アルミは熱伝導性が高く、トランスの熱を効率よく拡散してくれます。
トランスより一回り大きいアルミ板で放熱面積を広げています。アルミ板は室温より4℃以上高くなっているので、放熱に貢献しているのがわかります。
もちろん、ここまでやらなくても、アルミ板の上に置くだけで放熱効果があります。
冬場はむしろほんのり暖かいくらいで、気になりませんでした。
ノイズカットトランスの選び方
ノイズカットトランスはシリーズが多く、どれを選べば良いか迷いやすいです。
私も最初は仕様や違いが分からなかったため、メーカーに直接電話で確認しました。
結論として、オーディオ用なら NCT-Iシリーズ がおすすめとのことでした。
NCTシリーズはI1~I3まで3種類あります。 私は200V対応の「NCT-I1」を使用しています。
NCT-I1はプラグと電源タップを自分で取り付ける必要がありますが、作業は難しくありません。

100V環境で使う場合は、コンセントが最初から付いている「NCT-I3」が便利です。 プラグ加工なしでそのまま使えます。
Amazonは大容量(1000VAモデル)のみの取り扱いでした。505VAで足りる場合は楽天市場での購入がスムーズです。
なお、NCT-Iシリーズの違いや選び方については、こちらの記事で詳しく解説しています。

電源強化は音質の伸びしろが大きい
「マンションのコンセント → 戸建て専用回路 → 200Vノイズカットトランス」
と段階的に強化してきましたが、
ノイズカットトランスを導入した時が最も伸びしろを感じました。
使い始めてから、家庭用コンセントはノイズが多かったのだと気づかされました。
こんな方におすすめです。
・コンセントやタップでは頭打ち感が出てきた
・音の厚みやエネルギー感をさらに引き出したい
こういった目的がある場合、導入を検討する価値は十分あると感じました。
オーディオメーカー製の電源機器は50万円を超えることもありますが、電研精機のトランスは5万円前後から導入できます。
業務用グレードの性能を、手の届く価格で試せるのが最大の魅力です。
本格的な電源対策をしたいけれど、高価なオーディオ製品には手を出しにくい…。
という方に電研精機のトランスはちょうどいい選択肢です。
なお、私自身は他社トランスも比較したうえで電研精機を選びました。
なお、他メーカーとの比較検討についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
アイソレーショントランス購入時に比較検討したメーカー4選!おすすめは電研精機



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